40代サラリーマンの日記

わたくし、40代のサラリーマンの日常を書いています。

イノベーションが消えたアップルはどこに向かうのか?

アップル社の業績は好調で、売り上げが下がっても利益は上昇を続けています。利益率の高い商品を巧みに販売する鮮やかな手法は健在で、今のアップルが怪物的企業なのは間違いありません。しかし問題を抱えているのも明らかで、その最大のものが2010年iPad以来、ヒット商品を出せていないのです。
 

アップル・ウオッチのつまずき

野心的な試みのアップル・ウオッチは、大失敗というほどでもないようですが、成功とは言えない状況です。
 
野心的な試みが多いのですが、致命的なのはワクワク感がないことで、アップル・ウォッチを所有することで、生活がどのように変わるかイメージがつかないのです。従来のアップルは、このイメージ想起が得意でした。
 
アップル・ウォッチの苦戦を見て「そもそもニーズがない」という指摘もありますが、それは見当違いの指摘です。ニーズがないところに市場を作り出すのがイノベーションであり、従来のアップルが得意としていたことです。
 

アップルのイノベーション

iPodが発売された時に、全てのライブラリを持ち歩こうと言われて、ピンときた人は少なかったはずです。家に100枚のCDがあっても、持ち歩くのはお気に入りの曲やその日の気分で決めるのが常識でした。日本ではMDの全盛期ですから、ウォークマンに十数曲が収められたMDを1枚か2枚持っていくわけです。
 
しかしアップルは「家にある100枚のCDを全部持ち歩くと楽しいよ」と言い、そのために 500ドルもするiPodを買えと言っていたのです。実に馬鹿馬鹿しい話だと、大半の人が思いました。しかしアップルはシャッフル機能で100枚のCDを聴くと、新しい体験ができると主張し、やがて同調する人達が現れて世界的大ヒットになりました。
 
iPadの登場時も同様で、タブレット型のコンピュータへのニーズはあったでしょうが、少数の声でした。キーボードがないコンピュータは、入力インターフェイスが劣るからです。当時はネットブックが流行していましたが、ジョブズはそれらを「ガラクタ」と切り捨ててiPadを発表しました。発売後はネットブックは消え去り、タブレットは人気のカテゴリーになっています。
 

商品開発力は低下していないか?

ジョブズ復帰以降のアップルは、ヒットした商品にばかり目が行きがちですが、失敗作も数多くあります。華々しいデビューの後、批判を集めたものや全く売れなかったもの、話題にすらならずにひっそりと姿を消していったものも、実は多いのです。
※アップルのニュートン。早すぎたiPadだったのかも。
失敗を繰り返しながら、成功を掴んできたわけですが、最近は成功がない割に失敗もないように思います。
 

ジョブズ復帰以降の失敗作

圧倒的に美しいデザインに不足したパワーとリソースを兼ね備えていました。何より高価で、話題になったものの売れませんでした。
※宙に浮くような筐体で、圧倒的な美しさでした。
iChat (2002年)
Mac OS Xに搭載されたチャット機能です。ビデオチャットを搭載すると、ジョブズは画期的な製品だと賞賛していました。しかし多くの人はSkypeを利用しました。
※使いやすいチャットでしたが、Macでしか塚会えないのが残念でした。
iTunes Phone (2005年)
iPhoneの前にモトローラと手を組んで出した商品で、音楽が聴ける携帯電話でした。発売されたことすら、記憶していない人の方が多いと思います。
※100曲しか入らず、パソコンに繋ぐ必要がありました。
iPod Shuffle (2009年)
3代目のシャッフルは、本体に電源/ロックボタン以外は何もない、シンプルの極みでした。シンプルすぎて使い勝手が悪く、わずか1年半で姿を消します。
※専用リモコンもボタン一つで、シンプルすぎて面倒でした。
Ping (2010年)
音楽を軸にしたSNSで、何ができるのかわからないままサービスを終了しました。Facebookとの統合も噂されましたが、交渉が失敗すると、そのまま終焉しました。
※「ラジオ以来の発明」と豪語していました。
細々したものを含めると、さまざまなものがひっそりと消えていきました。
 

顧客の声に耳を傾ける

ジョブズが去ったアップルの大きな変化は、顧客の声に耳を傾ける姿勢が見えることです。ジョブズは顧客の声を聞いてはいましたが、意図的に無視することが多くありました。
※ユーザーからのメールに「お前はバカか?」と返信した、なんて話もありました。
大衆が望むものが欲しいものとは限らず、大衆は自分が欲しいものが何なのかわかっていないこともあります。だから顧客の声を聞きすぎて、迷走した会社はいくつもあるのです。顧客の声を聞くのは一般的な会社では当然のことですが、アップルが普通の会社になろうとしているように見えます。
 

まとめ

不思議で仕方ないのは、アップルが以前のように野心的な商品を発表しなくなったことです。アップルは傾きつつある会社ではなく、多額の現金を保有している会社です。失敗しても、致命的なダメージは受けません。金余りのこの時期に、守りに入っているような印象を受けます。
 
ジョブズのように、普通の製品を画期的な製品に見せる魔法を持った人がいないので、以前のようにはいかないので難しい部分もあるでしょう。しかし、そんな魔法のようなスキルを持った人は滅多にいないのです。このままブランドに傷がつくことを恐れ、顧客が望むものを提供するだけでは、アップルは平凡な企業になってしまいます。
※こんな本社ビルに大金を使うより、開発にもっと投資した方が良いのでは・・・?
この平凡な大企業への道を、歩んでいるような気がしてなりません。