40代サラリーマンの日記

わたくし、40代のサラリーマンの日常を書いています。

未来を知りたければSFを見よう /鉄腕アトムや攻殻機動隊が揺るがす未来

かつて報道番組「ニュースステーション」で、東大に合格した男子学生が「将来の夢はガンダムを作ることです」と答えたのを受けて、久米宏氏は「最近の男子学生はレベルが下がっている」と嘆きました。残念ながら、久米宏氏は科学技術の発展にSFが与えた影響をご存じなかったようです。



ジョージ・ルーカスの主張

映画「スターウォーズ」の制作者として知られるジョージ・ルーカスは、SFこそ人類にとって最も重要なジャンルの1つなのに、それを理解している人が少ないと嘆いていました。ルーカスは問いかけます。「アポロ11号の乗組員の宇宙服が、なぜ映画『月世界制服』に出てきた宇宙服にそっくりだったのだろうか?」

ジョージ・ルーカス


「月世界制服」は1950年のアメリカ映画で、月ロケットを開発した物理学者とその仲間が、月を冒険する物語です。ルーカスはアポロ11号の宇宙服が「月世界制服」とそっくりだった理由を2つ挙げています。

※映画「月世界制服」


1.「月世界制服」のスタッフが、当時の最新の科学技術を研究して、宇宙服のデザインをしたから。
2.「月世界制服」を見て感動した子供達が、NASAに就職してアポロ計画に携わったから。

ルーカスは、優れたSFは感動を与えて現実世界に強い影響を与えると言います。SFは未来をデザインし、科学技術の向かう先を変える力さえあるというわけです。

二足歩行ロボットへのこだわり

日本ではホンダのアシモに限らず、二足歩行ロボットの開発が多く見られます。アメリカは四足歩行も研究していますが、日本では「アトムを作ろう」という掛け声のもと、二足歩行ロボットに夢を託す技術者が多くいるのです。漫画「鉄腕アトム」の影響は、ロボット工学に及んでいます。

※こちらは「エイリアン2」のクレーンロボットの影響も感じます。


かつてのソニーのヒット商品「アイボ」も、当初は「アトムを作ろう」という企画でした。しかし二足歩行は時期尚早とされ、まずは四足歩行となったのです。二足歩行は絶えずバランスを取り続けなければならず、不安定で歩く動作が複雑すぎるという問題があります。しかしそれでも二足歩行を諦めないのは、アトムを見て育った世代から「機動戦士ガンダム」を見て育った世代にロボットの研究が引き継がれているからです。

ソニーのアイボ


久米宏氏は「ガンダムを作るのが夢」と語る学生に失望していましたが、未来を作るのは子供のような無邪気さを持ち続け、少年のような夢を抱いたまま研究に没頭する科学者や技術者なのです。


攻殻機動隊が兵器を変える

攻殻機動隊」のコミックが発売されたのは1991年で、ほとんどの人がインターネットを知らない時代でした。そんな時代に脳を直接インターネットに接続し、ハッキングの応酬が繰り広げられる物語は、あまりに前衛的でした。


脳を直接インターネットにつないで、web上のアーカイブを自分の記憶のように使う研究も進んでいますが、攻殻機動隊の技術の中で最も研究が進んでいるのは光学迷彩でしょう。マントのようなものを被った草薙素子が、ビルから落下しながら周囲の景色に溶け込むように消えていくシークエンスは、あちこちで引用されました。

光学迷彩を使う草薙素子


現在は有機ELパネルを設置した戦車が、周囲の景色を映し出して景色に溶け込む実験が行われています。また光を屈折させて、透明になったかのように見えるマントも度々発表され、アメリカのメディアでも攻殻機動隊の影響が語られています。すでにいくつかの軍事企業は、この革新的なカモフラージュ技術に莫大な投資をしていると言われます。ステルス技術の次は光学迷彩だというのは、今や当然のことのように語られているのです。

※こちらは消えるベンツの実験

 

まとめ

ジョージ・ルーカスは「私を始めて宇宙に連れて行ったのはキューブリックだった」と語り、アポロ11号からの宇宙の様子が、前年に公開された映画「2001年宇宙の旅」にそっくりだったために子供心に興奮したことを語っています。こういった興奮が未来を作り、進歩の道筋に影響を与えます。

今まさに最先端の分野で研究をしている人達が、強い影響を受けたSFを知れば未来の一端を垣間見ることができます。火星にチャンバラを持ち込むのがSFというわけではありませんし、子供の妄想でもありません。今そこにある未来は、すでにSFに描かれた未来なのです。