40代サラリーマンの日記

わたくし、40代のサラリーマンの日常を書いています。

世界一まずいと言われるイギリス料理の世界

まずい料理と言えばイギリス料理、イギリス料理と言えばまずい。まずい料理の代名詞として世界的な評価を得ているイギリス料理ですが、どうしてそんなにまずいのか、理由を考えてみました。
 
 
「あの国の料理はまずい」と言われるとき、大抵の場合は現地の味付けが旅行者に合わないだけというのがあります。またロシアや北欧など、外食産業が発展していないため、旅行者が美味しい料理にありつけない国もあります。しかしイギリス料理は、イギリス人自身が「まずい」と話のネタにし、フィリップ殿下エリザベス女王の夫)も「イギリスの女性は料理ができない」と発言したこともあるほどです。
 
 

1.まずいと言われるイギリス料理の例

(1)フィッシュ&チップス
日本で売られているフィッシュ&チップスは美味しいのですが、イギリス人の基本として下味はつけません。ぶつ切りにした魚の身を衣で揚げただけです。臭みをとることもしないので、魚の種類によってはクセのある臭いで食べられないなんてことも・・・
※皿なんか使わずに、新聞紙で出すのが本場
 
(2)ハギス
羊の心臓や肺、肝臓などを茹でてミンチにし、ハーブやスパイスなどと混ぜた後に羊の胃袋に詰めた料理です。フランスのシラク大統領(当時)は、ドイツ首相と会談の際に「ハギスのような酷い料理を食べる連中は信用ならない」と発言し、これに対してイギリスの外相が「ハギスに関しては、シラク大統領の説はごもっとも」と返しています。口にするのも辛いという人もいます・・・
ウイスキーをかけつつ、ポテトと食べるとなかなかの味かも
 
(3)スターゲイジー・パイ
伝統的にニシンの一種、ピルチャードを使用したパイです。魚の頭部がつき出て上を見ていることから「星を見上げるパイ」と呼ばれています。漁師の大漁を願った漁師町の家庭料理なので、レシピは家ごとに違っています。そのため味もさまざまですが、見た目のインパクトで敬遠されます。
※見た目的にムリという人が多いですね。
 
(4)ウナギのゼリーよせ
かつてテムズ川にはウナギが多く住み、労働者の貴重な栄養源でした。ぶつ切りにしたウナギを茹でて、ゼリーを絡ませて食べます。臭みをとらない、下味はつけないというイギリス料理の基本が生きていて、ゼリー部分に臭みが集約されているようです。見た目の悪さだけでなく、冷えたウナギの脂が下に残る不快さと、口内に突き刺さるウナギの背骨、後を引く臭みで敬遠されています。
※これも見た目でムリな人が多いと思います。
 

 

2.美味しいと言われるイギリス料理の例

(1)イングリッシュ・ブレックファースト
薄いトースト、卵料理、ベーコンかソーセージ、トマトソースで煮たインゲン豆、ハッシュドポテトなどがつきます。「イギリスでは朝昼晩、朝食を食べた方が良い」という人もいるほどです。


(2)スコーン
イギリスのスコーンは、アメリカではビスケットと呼ばれ、日本のビスケットとも違うので何かと混乱しがちです。大麦や小麦を牛乳やバターで練って焼いたパンです。さまざまなトッピングや味付けのバリエーションがあり、イギリスの定番です。クロテッドクリームやジャムをつけて食べます。

 
(3)ミンスパイ
リンゴやドライフルーツを砂糖で煮詰めて、タルト生地で包んだパイです。元々クリスマス料理だったようですが、今では年中食べられるようです。

 
(4)スティッキー・トッフィー・プディング
ブラッド・ピットアンジェリーナ・ジョリー夫婦がイギリスで食べて感動し、あちこちで触れ回ったおかげですっかり世界的に有名になりました。そうそう「セックス・アンド・ザ・シティ」にも登場して、お洒落な食べ物の仲間入りをしましたね。温かいプディングを、冷たいバニラアイスと一緒に食べるのが美味しいそうです。
 

 

なんとなく見えてきたと思いますが、イギリスは料理がまずくてデザートが美味しいと言われる傾向にあります。
 

3.なぜイギリス料理はまずいのか

諸説ありますが、いくつかを見ていきましょう。
 
(1)宗教的な理由
個人的には、これが一番しっくりきます。イギリスはイングランド国教会という独自のキリスト教ですが、文化的にはプロテスタント寄りです。
プロテスタントといえばこの人、ルターですね。
 
プロテスタントの国・・・オランダ、ドイツ、アメリカなど
カトリックの国・・・フランス、イタリア、スペインなど
 
このように、料理が美味しい国とまずい国でキレイに分かれます(ドイツは美味しいイメージだが、食材の種類が少ないので美味しいのは最初の1週間だけ、なんて言われる)。
 
地中海に面しないアルプス以北の国々は、河川が少なく土地が痩せているので、まずい野菜に腐りかけた魚や肉を工夫して食べていました。文化の発展とともに食文化をはぐくみますが、質素を美徳とするプロテスタントは料理にも質素さを求めたといいます。オランダ人は、1週間ジャガイモだけを食べても気にしないなんて言われています。
 
プロテスタントの文化圏にあるイギリスも、同様に美味しい料理より質素なものを好んだというわけです。
 
(2)ジェントリー階級の教義
上記の宗教的理由に関連しますが、ピューリタン革命以降の新興貴族の誕生やジェントリー階級の登場は、彼らが新しい支配者層であることを国民に知らしめる必要がありました。彼らが身をもって示したことに中に「暴飲暴食は貧しい者の行為で、ジェントルマンは質素を美徳にする」というのがありました。また「美食に溺れるのは醜いこと」というのもあり、質素な食事こそが素晴らしいとしたわけです。
※ジェントリーはこういう人達です。不労所得で暮らし、郊外に住んでいます。
 
(3)イギリスの身分社会
下流階級の家の子供は、中流以上の家庭にお手伝いさんとして住み込みで働いていました。彼らは働く家で料理を学びますが、まだ子供の彼らに大人向けの本格的な料理の味は理解できませんでした。さらにお手伝いさんに任せっきりになったことで、お袋の味の継承も途絶えたといいます。
 
(4)フランスが嫌い
大陸に強いあこがれがあり、イギリスの貴族はフランスの料理人を雇うのがステータスでした。しかしナポレオンの台頭やイギリスの国力のアップなど様々な要因で、フランスとは敵対関係になります。これによりフランス料理や風習を嫌うようになり、フランス流の美味しい料理を楽しくワイワイ食べる行為も避けるようになったといいます。
 
(5)産業革命による食生活の変化
18世紀から始まった産業革命は、労働者を都市部の工場に集めました。そのため農業や酪農は減少し、それらは輸入に頼ることになります。それまで労働者は昼ご飯を家で食べていましたが、工場勤務になると工場で食べるようになります。家で食事を作って食べる文化から、食事を買って食べる文化に移行します。
 
この時、労働者に好まれたのが安くて腹一杯になるフィッシュ&チップスであり、少ない量で栄養価が高いウナギのゼリー寄せでした。過酷な労働環境下では美味しいことよりも、腹一杯になることや栄養がとれることが重視されたのです。
産業革命下の労働者の様子
 
(6)やせ我慢の文化
スーツの文化もそうですが、イギリスの紳士は上流階級であることを保持するために、やせ我慢をします。特に貴族の下に属するジェントリー層は顕著で、貴族がこれをしていると聞けば真似をしていました。食事もその一つで、上流階級の真似をして食べるという行為が重要で、味にはこだわらなかったといいます。
 
 
個人的には、宗教的な理由が一番しっくりきます。お金がない労働者だけでなく、裕福な上流階級の料理も等しく「味がしない」「味があるものは強すぎる」「調理に手間をかけない」というのは、金銭的な理由ではないと思うからです。
 
 

4.料理が不味いのにスイーツが充実しているわけ

宗教的な理由で、質素な食事を重んじた反動だと思われます。ティータイムにたっぷり時間を使い、美味しいお茶とスイーツを食べることで食の満足を得ていたのでしょう。イギリス人がティータイムにうるさいのも、美味しいものを味わえる唯一の時間だからかもしれません。
 
しかし大ざっぱさ、味付けのテキトーさというイギリスらしさもあり、店を選ばないと、木工用ボンドのようにカチコチのクリームがついた、ゴムまりのような固さのタルトも普通に売られているようで、注意が必要です。
 

5.まとめ

イギリス料理が不味いと言われるのは、さまざまな理由があります。それにイギリス人が独特のブラックユーモアで、自分たちの料理のまずさをジョークにしているため、広がったというのもあるでしょう。今や世界的にまずい料理の代名詞になっています。
 
かつてイギリスのロックバンド、ザ・ローリング・ストーンズがアメリカ公演で訪米した際に、「ニューヨークにはろくな食べ物がないから、毎日フランスから料理を届けさせている」と発言し、ニューヨークの大衆紙が「イギリス人が不味いと言いだす料理を出しているのは、どこの店なんだ?」という記事を掲載しました。イギリス人が不味いなんて言い出したら、そこの料理はおしまいだというわけです。
 
しかし、中には美味しいイギリス料理もあるのも事実です。東京にも美味しいイギリス料理のお店があるので、ぜひ試して見てください。