作業着のワークマンはアパレルの巨人になれるのか
建設作業員御用達のワークマンが、じわじわとアパレルに進出しています。前年比を超える売り上げを更新し、アパレルメーカーとしての存在感を年々強めています。本業が低迷したため異分野に進出する会社は多いですが、ワークマンの場合は市場から求められてアパレルに進出したのが特徴です。
ネットで話題になった防寒具
以前からバイク便のライダーには、ワークマンの防寒具や雨具を使う人がかなりの割合でいました。仕事着と割り切り、安価なものを求めた結果です。ワークマンは防寒や防雨に対して高い性能を持ちつつ、値段が安いのが特徴でした。2ちゃんねる のバイク板では、ワークマンのウェアがたびたび話題になっていました。
※ワークマンのイージスはバイク乗りの間で話題になりました。 |
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2015年頃に、バイク乗りの間でワークマンの防寒具が注目されました。現在も売れ筋のイージスは上下セットで6800円の安さです。バイク用の防寒具なら数万円はするので、破壊的な安さでした。夜間作業用の防寒具には、反射板や蛍光色が多用されて目立ちやすくなっています。バイク乗りにはこれも好都合でした。
※某社のバイク用ジャケット。高機能ですがジャケットだけで3万円近くします。 |
あちこちの店舗で売り切れが続出し、ワークマン本部はバイク用の商品も作り始めました。そしてこの評判は、釣りを趣味にする人達に波及していきます。雨や寒さから身を守る人達が、安価な製品を求めてワークマンに集まりました。
ワークマンの強み:低価格
とにかく安いことです。建設作業員は汗をかくので1日に何回も着替えるため、まとめ買いをします。さらに汚れたり破れたりすることも多いため、数ヶ月で新しいものを購入します。ユニクロなどの製品に比べると買い替えサイクルが早く、しかも大量購入する個人顧客が多くいるのです。そのためワークマンは1商品10万着というとんでもない量の生産を行っていて、アパレルメーカーでは考えられない量産が低価格を実現しています。
さらに店舗の従業員が少ないのも特徴です。買いに来るのはプロの作業員なので、何が欲しいかわかっているので接客はさほど必要ありません。また顧客の特徴として、現場が始まる前の朝7時から7時半くらいに、作業員を乗せた乗り合いの車で買いにくるケースが多いのです。新人は先輩に連れられ「これ買っとけ」と言われるまま買うことも多く、接客の人件費がアパレル店に比べて低くなっています。
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ワークマンの強み:高機能
建設現場では肉体労働か続きます。暑かろうが寒かろうが雨が降ろうが、仕事を終えなければ給料が出ないため、過酷な天候でも働き続けなければなりません。そのため、汗が早く乾くシャツや防寒性に優れたものは、口コミで現場内にすぐに広がります。
※建設現場で人気の透湿レインスーツSTRETCH |
安価で優れたものを求める要求基準は高く、悪い噂もすぐに広がります。ワークマンはこれら現場の声を元に商品開発を進めてきました。例えば筋肉を引き締める素材が疲れを軽減することは知られていますが、それらも作業員は効果がないと思ったら、すぐに買わなくなります。逆に少し高くとも効果があると思ったら、すぐに口コミが広がるのです。
ワークマンはコストパフォーマンスの要求が厳しい環境で、長年実績を積んできました。最高の機能ではなくとも、値段に見合った性能を出すことはワークマンにとって至上命題だったのです。
アパレルに向いているか?
以前はデザインは二の次で、機能性を最重視してきたワークマンですが、ここ10年ほどの間にデザイン性にも力をいれてきました。若い作業員へのアピールに加え、建設作業員の休日の私服も考えるようになったからです。作業着を買いに来てくれた顧客に、休日の服も売るのは当然の流れです。ましてや着心地が良いと思っている服なら、休日だって着たいはずです。
こうしてワークマンは作業用の服だけでなく、以前から普段着も作っていたのです。そうしたデザイン性がバイク乗りや釣りが趣味の人の目にとまり、ネットで安価で高機能だと話題になって爆発的に売れ出しました。
ライバルはどこか?
恐らくユニクロやしまむらがライバルになるでしょう。一般的なカジュアルブランドのユニクロとは異なり、ワークマンは特定の趣味を持つ人たちに高い支持を得ているので棲み分けも可能かもしれません。それにユニクロの背中を追うだけではないかもしれません。
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現在はバイク乗りと釣り人がワークマンを支持していますが、サバイバルゲームが趣味の人、ガーデニングが趣味の人にも広がりつつあり、さらに厨房用の滑りにくいシューズがブログで紹介されると妊婦の間で人気になっています。またサーファーがワークマンで地下足袋を買い求めるなど、ワークマン本部も予想外の展開を見せつつあります。そのため、今後は予想もしない企業がライバルになる可能性もあります。
※アウトドアでは確実に人気を広げています。 |
まとめ
ワークマンがどこまでアパレルで成功するかは未知数です。現在の接客をほとんどしない店舗に違和感を覚える客層もいるでしょうし、フランチャイズ店舗も作業員以外の人の来店に戸惑いがあるようです。今後どのような展開になるかはわかりませんが、ワークマンの動向には注視したいと思います。アパレルに思わぬ波風を起こすかもしれません。